オリックス証券主催セミナーで絶大な人気を誇る、株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ吉田恒氏の外国為替相場レポートです。豊富なデータと確かな取材を元に、米ドル、ユーロなどの為替相場の「今」と「これから」を鋭く読み解きます。
(更新は毎週平日の月・木)

リスク回避のドル高は続かない

2010年02月08日

100208_1 1月後半の半月でNYダウは600ドル以上の大幅安となった。中国の金融引き締め、米オバマ大統領の金融規制案、欧州ギリシアの財政懸念など悪材料が集中したためとの説明が一般的なようだ。こういった中で為替はドル高となったため、リスク回避のドル高との理解もあるようだ。ただ、私は株安へ基調転換したわけではないと思っている。そうであれば、リスク回避のドル高には限界があると思う。

本格ドル高には超低金利修正の現実性が必要

 さて、まず株から考えてみよう。米株などはなぜ1月後半急落となったのだろうか。それは、短期上がり過ぎの修正だったと私は思っている。
 短期の相場の行き過ぎは、「オーバーシュート・アラート(OSA)」の中の90日移動平均線からのかい離率でみてみよう。たとえば、NYダウの同かい離率は、昨年秋にかけてプラス10%を上回っていた。これは、短期上がり過ぎの可能性があったことを示している。
 ところで、短期OSAのルールからすると、行き過ぎ相場の修正は、90日線を逆に振れるまで続くのが基本。昨年秋以降、NYダウの同かい離率は、90日線を完全に割り込むまでには至らず、この1月末にかけてようやく90日線割れとなってきた。これは、遅れていたNYダウ短期上がり過ぎ修正が、この1月末にかけてようやく起こってきたという意味になる。
 こんなふうに、この1月後半の米株急落は、短期上がり過ぎ修正の動きと考えられ、それ自体は90日線割れで、最低限の条件をクリアーしたことになる。ではここから一転して、「下がり過ぎ」拡大に向かう可能性はあるだろうか。
 上がり過ぎが、その反動で下がり過ぎに振れる、「振り子の法則」はあるが、しかし短期OSAのルールからすると、それは中長期トレンドと逆行しないのが原則。つまり、中長期下落トレンドでないかぎり、短期の下がり過ぎは起こらない、別な言い方をすると90日線からのかい離率がマイナス10%以上には拡大しないということになる。
 NYダウは、昨年3月に底打ち、急反発に転じた。その意味では、中長期的には上昇トレンドが続いていると思う。そうであるなら、2月1日現在で1万200ドル程度の90日線を10%以上も下回ることはないから、単純計算すれば9200ドル割れの可能性は低いといった見通しになる。
 以上のように私は株安への転換だとは思っていない。そうであるならリスク回避が一段と広がるのはまだ早いと思う。そしてリスク回避=ドル高にも限界があると思っている。
 今年の本格的なドル高は、株高が再開し、利上げしても株高が崩れない見通しになった時、米利上げを3―6ヶ月先取りしたドル高になると思っている。株安の中では、そもそも利上げができるか微妙であり、超低金利のままのドルが本格的に上がるのは基本的に考えにくいと私は思っている。 (了)

「ニュー・オバマ」の「弱いドル安」

2010年02月04日

100204_1 識者の間で、1月19―21日の3日間で、オバマ大統領を取り巻く政治環境が劇的に悪化したとの見方が強まっている。これを受け、一般教書演説の草稿も、「かなり書き直されたのではないか」との見方が囁かれている。この一般教書では、最重要の雇用関連措置として、金融改革、技術革新促進に続き、輸出拡大の必要性が主張されたが、これまでの人民元高要求から、新たにドル自体を安くする政策に変わり始めている可能性も一部では取り沙汰されている。

◆オバマを変えた3日間
 「オバマを変えた3日間」、このうちの1月19日は一般的にもかなり理解されているところだろう。マサチューセッツ州の上院議員補欠選挙での民主党候補のまさかの敗北、「マサチューセッツ・サプライズ」だ。リベラル中のリベラルとみられていたマサチューセッツで、その後の一般教書演説の主役を飾る予定だった唯一で最大の政治的成果となるはずだったヘルスケア法案成立に不可欠な「虎の子の一票」を失った政治的打撃の大きさは、一般的にもかなり報道されている。
 ただ、もう一つ、「1・21ショック」は一般的にあまり認識されていないのではないか。1月21日に下されたある判決が、じつはオバマ政権にとって大打撃となる可能性がありそうだという。この判決は、選挙に際し、企業が特定候補の主張を支持する場合、支出額に上限を設ける法律が違反というもの。これが賛成5票、反対4票の僅差で可決された。
 その意味は、結論的にいうと、企業資金を受け入れやすい共和党候補が、当然のように有利になるということ。いずれにしても、「オバマ大統領にとって、政策目標達成への前途多難さが倍加したことだけは確か」(米国専門家)とみられている。
 こういった中で、1月20日、オバマ大統領は金融規制案を発表した。これはその前に発表されていた金融機関への新たな課税案などに続く、金融規制路線の第3弾と位置付けられるもので、その意味ではそもそも政府内で検討されてきたものと考えられる。ただ、発表のタイミングが、「マサチューセッツ・サプライズ」の翌日ということから、あまりに選挙対策上良すぎる感が否めないとの見方も強い。
 こういったことから、「悪夢の3日間」を前後して、オバマ大統領が大きく変わったとの見方が識者の間でも強くなっているわけだ。一般教書で輸出拡大の必要性が主張されたが、このような「オバマの変心」と関連させると、為替政策もこの間の人民元高要求にとどまらず、新たなドル安政策に変わり始めている可能性も、一部の識者の間では囁かれている。
 1月19日以前と以後のオバマ大統領は「別人」かもしれないといった考え方すら必要ではないかということだ。1月24日付けNYタイムズによると、「オバマ大統領は、自身に勝利をもたらした選挙チームを続々とホワイトハウスに呼び戻し始めた」という。これも、単に中間選挙が近付く中での動きということなのか、それとも1月19日以後の「新たな動き」なのか。
 1月21日の金融規制案も、1月末の一般教書演説も、1月19日以後大きく修正されたといったことが果たしてあるのか。しかしある識者は、民主党の名物的な存在だった故オニール下院議長の有名な言葉を思い出したという。それは、「Timing Is Everything」。(了)

2月持ち越しのトレンドレス相場

2010年02月01日

100201_1 1月下旬にかけて、オバマ大統領の金融規制案や中国の金融引き締めなどをきっかけに、金融市場の先行き不安が急台頭、実際「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数も一時急騰となった。ただそんな「恐怖指数」の急騰もわずか2営業日程度で一服となった。金融市場の先行き不安拡大に伴うリスク回避をテーマにした展開が大きく広がっていく可能性は難しそうだ。ではあらためてリスク選好の展開となるのか。2010年も1ヶ月過ぎたが、方向感が明確に定まらない状況が2月に持ち越される感じとなっている。

方向性の手掛かり、ユーロドルに注目

 1月下旬にかけて、オバマ大統領の金融規制案、中国の予想以上に早い金融引き締めなどが相次ぐと、金融市場には先行き不安が急台頭し、一時株価は大幅反落、そして為替の円・ドル同時高の動きはリスク回避の結果との説明が多かった。
 ただ、この先行き不安台頭を示した「恐怖指数」の急騰はすぐに一巡した。これをみる限り、「オバマ・ショック」や「中国ショック」に伴う金融市場の動きは、先行き不安の拡大に伴う新たなリスクへの警戒というより、むしろリスクに対する行き過ぎた安心感の反動だった可能性が高いだろう。
 そもそも、「オバマ・ショック」等を受けて、昨年3月から続いてきた世界的な株高傾向、それは景気回復に伴うリスク選好の動きの一つといえるが、そういった動きが基調転換する可能性は考えにくいだろう。
 とりわけ景気敏感と位置付けられる日本株の場合、世界景気の先導役でもある米国の政策金利推移との相関性が高い。つまり、日本株の天井は、米政策金利の天井のタイミングと基本的に重なるものだ。最近のように、実質ゼロ金利で、米政策金利がむしろ底値圏で推移している中で、日本株が上昇から下落へ転換するとは考えにくい。
 そんな日本株に対して割高観のある米株など外国株の割高修正がどれだけ広がるかというのが、最近の「オバマ&中国ショック」の影響を考える上での焦点ということだろう。少なくとも世界的に株価が大幅安へ向かい、リスク回避をテーマにした展開が大きく広がるとは考えにくいのではないか。
 では、世界的に株一段高が再燃し、あらためてリスク選好をテーマとした相場が広がるかというと、上述のようにほんの少し前にリスクに対する行き過ぎた安心感となっていた可能性があったわけだから、それも考えにくいのではないか。

<月間アウトルック=2月>

 こんなふうに、2010年に入ってから1ヶ月が過ぎたものの、依然として明確な方向感が定まるには至っていない。方向感を考える手掛かりとしてユーロドルの動きに注目したい。
 年末年始とほぼ一本調子でユーロ安・ドル高が展開してきた。一方でユーロについては、CFTC(米商品先物取引委員会)統計でネット・ショート(売り持ち)が高水準になるなど、「売られ過ぎ」感もある。こういった中でもまだユーロ安が続くのか、それともユーロ「売られ過ぎ」の反動でユーロ高になるのか。それは、全体的に方向感が定めにくい中で、ドルの方向性に関する手掛かりになる可能性があるだろう。 (了)

2010年は1989年なのか

2010年01月28日

100128_1 米国発の金融市場クラッシュをきっかけに、一気に世界同時不況の様相が広がった。その混乱は意外なほど短期的に収拾されるところとなったが、混乱の収拾に向けて慎重をきした世界経済は「その国」にアンカー役を期待し、低金利の長期化を求めた。そしてようやく利上げに転換しようとした時、「その国」は資産バブルに見舞われていた――。

◆中国の利上げは「早過ぎる」のか「遅過ぎる」のか
 さて、あなたは上の文章中の「米国発の金融市場クラッシュ」を「リーマン・ショック」、「世界同時不況」を「100年に一度の危機」、そして「その国」を「中国」として読んだだろうか。ただじつは、私はこれについて1987年10月に起こった「ブラックマンデー」後の状況について書いたつもりだ。その意味では、「その国」とは「日本」ということになる。
 このように比べてみると、「リーマン・ショック後」と「ブラックマンデー後」は、結構似た構図だった。では、「リーマン・ショック後」における中国の役割に似ている面のある「ブラックマンデー後」の日本ではその後どんなことが起こったのか。
 世界同時不況が懸念される中、日本は世界経済のアンカー役が期待され、日本株が底入れ、反発となった後も低金利の維持を余儀なくされた。そしてようやく利上げに踏み切ったのは1989年5月だったから、ブラックマンデーが起こった1987年10月から19ヶ月後のことだった。ただこの時には、すでに日本国内での資産インフレ懸念がかなり強くなっていたため、最初の利上げは一気に0.75%もの大幅利上げとなった。しかしそれでも株高は止まらず、むしろ株高は「怖いもの知らず」となって、一段と急加速に向かった。
 利上げは株高のスピードを緩める役割といった意味では、自動車におけるブレーキのようなもの。しかしブレーキを踏んでも車が止まらず、それどころか加速するというなら、その車は壊れているということだろう。壊れた車が止まるのは自壊、クラッシュしかない。日銀が利上げをおこなう中でも、逆噴射のように加速した日本の株高は、1989年12月末に日経平均4万円近くまで急騰したところから、一転暴落に向かった。
 さて、そんな「ブラックマンデー後」の日本と、今回の「リーマン・ショック後」の中国は似た構図だという話だった。日本はブラックマンデーから19ヶ月後に利上げしたら、「遅過ぎる利上げ」でその後バブルの歯止めに失敗し、バブル崩壊に見舞われた。2008年9月「リーマン・ショック」から19ヶ月目とは今年4月になるが、中国も「遅過ぎる利上げ」でバブルの拡大、崩壊へ向かうのだろうか。
 長々と書いてきたが、私は中国の利上げが一般の予想より早いタイミングで起こる可能性を注目している。その上で、それは当面数ヶ月の中国を含めた世界の株高基調、リスク選好を転換させるものにはならないのではないかと思っている。(了)

なお微妙なドル高の持続性

2010年01月25日

100125_1 対ユーロでこの間のドル高値更新となるなど、円以外の通貨に対してドル高が再燃した。これは、ユーロ安の結果としてドル高になっているとの見方、また中国の予想以上に早い引き締めが安全資産のドル買いをもたらしているなどといった解説が基本のようだ。ただ、どちらにしても、一段のドル高をもたらすかとなると懐疑的な面がなくはない。

中国の「早過ぎる利上げ」でリスク資産売りなのか?!

 1月に入ってから、中国は預金準備率の引き上げなど金融引き締め的な動きに出ているが、これは一般の予想より早いとして、リスク資産売り、安全資産買いにつながっているとの見方がある。リスク資産として、豪ドルなど資源国通貨が売られ、その一方で米ドルは安全資産として買われているとされる。
 ただ、では中国の金融引き締めが本当に予想より早いものかは微妙ではないか。中国の株価は、たとえば上海総合指数でみると2007年10月から2008年11月にかけて約7割の暴落となった。これがバブル破裂だったと考えれば、「早過ぎる利上げ」はいわゆるオーバーキル、景気をふたたび失速させ、「バブル破裂第2幕」をもたらす可能性があるだろう。
 ただ現在が、「バブル破裂後」の状況ではないとなると、話はまったく違ってくる。たとえば、同じ株暴落でも、1987年10月のNY発世界同時株暴落、「ブラックマンデー」は一ヶ月程度といった短期間で大底打ちとなったといった意味では「短期暴落パターン」だ。この時、日本はブラックマンデーから約1年半後に利上げしたが、それでも株高は止まらず、むしろ「バブル株高」のクライマックスに向かうきっかけになった。
 さて、かりに2008年9月リーマン・ショックを「ブラックマンデー」だったとすれば、それからすでに1年半近く経っている。「短期株暴落」後が現在の局面なら、中国の利上げは早過ぎるのではなく、むしろ遅過ぎるとして、リスク資産は一段高に向かうきっかけになる可能性すらあるのではないか。
 そうでなくても、一般的に最初の利上げは株高基調の転換をもたらさない。株高基調の転換と一致するのは、むしろ最後の利上げや最初の利下げだ。このような考え方からも、中国の引き締めが、リスク資産売り基調への転換をもたらすとは考えにくいだろう。それは同時に、安全資産の米ドル買い基調への転換でもない可能性が高いということだ。

「ギリシアでユーロ売り」はいつまで続くのか?

 では、今回のドル高は、ドル高自体に主体性のあるものではなく、ユーロ安などの結果であるとの見方はどうか。かりにそうだとしても、それは一段とユーロ安・ドル高をもたらすものなのか。
 今回のユーロ安は、ギリシアなど一部の欧州諸国の財政破たん懸念などがきっかけになっているとされる。この材料によるユーロ売りという理屈はとてもわかりやすい。ただその中でのユーロ売りは、経験的にみるとかなり「行き過ぎ」になっているようだ。
 CFTC(米商品先物取引委員会)統計によると、ユーロのネット・ショート(売り持ち)最高は、2008年9月に記録した4万枚。これに対して、この年末年始も、ユーロのネット・ショートは一時3.5万枚程度まで拡大した。過去の実績からすると、かなり売られ過ぎの限界に近いところまでユーロは売られた可能性が高いだろう。
 しかもそれだけユーロ「売られ過ぎ」になっているものの、欧米政策金利差などでみるとむしろユーロが米ドルより優位になっている。この金利差ユーロ優位が、米早期利上げにより解消に向かう見通しが出てくればともかく、今のところそれも目処が立っていないのが実情だ。そういった中では、金利差で優位なユーロが「売られ過ぎ」である結果のドル高にどれだけ持続性があるかは微妙ではないか。 (了)

中国の利上げは予想より早まるのか

2010年01月21日

100121_1 新年早々、中国が預金準備率引き上げに動いたことについては、予想より早いタイミングとの受け止め方が一般的だった。2007年からの中国株暴落を「バブル崩壊」と考えれば、確かにそういった見方になるが、しかし、そうではなくてこの中国株暴落が「ブラックマンデー型」だとしたら、今回の引き締めへの転換も決して早くない、それどころか4月には利上げが行われるといった見通しになりそうだ。

◆4月利上げシナリオ
 日本の株バブル崩壊が起こったのは1989年12月末。その後、株価がいったん底入れするまでにも2年半以上かかり、1992年8月に底入れとなった後もしばらく金融引き締めへの転換は慎重な判断を余儀なくされ、当時の三重野日銀総裁の勇退をきっかけとした「花道利上げ」として、短期金利上昇容認といった小幅の引き締めがおこなわれたのでも1994年12月、つまり5年後のことだった。
 さて、上海株(総合指数)は、2007年10月の6000ポイントという高値から、一時1800ポイント台まで7割もの暴落となった。これが「バブル崩壊」型の株安なら、株価底入れ後も利上げへの転換は慎重になり、単純に上述の日本株バブル崩壊後のパターンを当てはめたら、2012年まで利上げはおこなわれないといった話になる。
 ただ、株価の暴落も、バブル崩壊といった中長期暴落ではなく、1987年10月のNY発世界同時株暴落、ブラックマンデーのような短期暴落パターンでは、利上げへの転換のタイミングもまったく違ったものになる。ブラックマンデー後の日本では、1989年5月に0.75%の利上げがおこなわれた。ブラックマンデーから19ヶ月目のことだった。
 さて、2008年9月のリーマンショックが「ブラックマンデー」だったとしたら、すでに今月で16ヶ月過ぎたことになる。上述のように、日本がブラックマンデーから19ヶ月後に0.75%もの大幅利上げに動いたことから考えると、今回の中国による預金準備率引き上げのタイミングは、一般的に思われているほど「早い」ということではないかもしれない。それどころか、単純にパターンを当てはめると、4月には利上げという見通しになる。
 ブラックマンデー後の日本と、今回の中国では違いもあるため、単純に比較できない面ももちろんあるが、こんなふうにみてくると、今回の預金準備率引き上げだけでなく、今後も中国の引き締め実行が予想より早めにおこなわれる可能性は注目されそうだ。

◆米中蜜月関係に変化の兆し
 ところで、その中国は対米関係でも変化の兆しが出てきた。米中関係は、昨年6月初めのガイトナー財務長官訪中頃から「蜜月」との見方が強くなっていたが、年明け早々のいわゆる「グーグル問題」をきっかけに、「蜜月」が変化し、「悪化」に向かい始めたとの見方も増え始めている。
 こういった見方が強まるきっかけになったのは、有力経済紙である英FTが先週相次いで米中関係についての報道をおこなった影響も大きかったようだ。FTは、「グーグルvs北京」といった特集記事に続き、15日付けでは「米中G2時代に影」と題する記事を掲載した。
 有力エコノミストで米国問題に精通している双日総研の吉崎達彦氏も、自身のサイトの中で、「年が明けてから、中国に対する風当たりが急速に強くなってきた。(略)グーグルの件が飛び出して、いよいよ決定的な流れになってきたと思う」との見方を示していた。
 今年は米国で中間選挙が予定されているということもあり、「グーグル問題は、米中にとって波乱含みのこの一年においては一発目の問題に過ぎないかもしれない」といった見方を、上述のFTでも示していた。
 さて最初に書いたように、昨年6月のガイトナー訪中以降、今や米国債の最大の買い手である中国が米国債投資を続けるとの見方から、米長期金利上昇は回避されてきたが、そういった金融市場の安定をも脅かす動きになる可能性も注目されるところだ。(了)

米早期利上げめぐる綱引きの展開

2010年01月18日

100118_1 米利上げの織り込みをめぐる綱引きが続いている。ドル買いが続くのは、半年以内での米利上げの現実性が高まった場合。そうでなければ、ドル買いの継続は難しく、それどころか円「売られ過ぎ」、ドル「買われ過ぎ」気味の反動が本格化する可能性が高まるだろう。

重大岐路に立つ円売り・ドル買い

 8日に発表された米12月雇用統計で、注目されたNFP(非農業雇用者数)が予想より悪かったことなどをきっかけに、いったん米早期利上げ期待は後退した。しかし、13日に一部で6月にも米利上げの可能性といった情報が流れると、あらためてドル買いの動きとなった。
 経験的に、米利上げに伴うドル買いは、実際に利上げが始まる半年程度前から始まる。その意味では、利上げが6月までにあるか、6月より大きく遅れるかは、ドル買いの継続性、本格性を考える上で大きな目安になるだろう。
 別な言い方をすると、半年以内の米利上げを織り込む形で、米金利の一定の上昇が確かなものにならないかぎり、継続的なドル買いは本来的に難しいと考えられる。経験的には、日米の政策金利差のドル優位が2%未満の状況では本格的なドル買い拡大とはならないからだ。
 そんなふうに、本格的なドル買い・円売りが可能な状況にならないなら、すでに円売り・ドル買いは「行き過ぎ」の限界に近い状況にあるといえるだろう。ヘッジファンドなどの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引)統計によると、1月5日現在で円は1.6万枚のネット・ショート(売り持ち)、一方主要5通貨のポジションを参考にして計算した米ドルのポジションは4.8万枚のネット・ロング(買い持ち)だ。
 前者は、円高基調が展開する中では最高のネット・ショートに近く、後者も「100年に一度の危機」で異例の「有事ドル買い」となった2009年春にかけての一時期を除くと、最高のネット・ロングに近い。つまり、本格的な円売り・ドル買い拡大とならないかぎり、すでに円売り・ドル買いは「行き過ぎ」の限界にあると考えられるわけだ。
 そして、そんな本格的なドル買い・円売りになるかの条件が、6月までの米利上げということになる。それが難しいということになると、円売り・ドル買い「行き過ぎ」の反動が入ることにより、円高・ドル安へ振れるリスクが要注意となる。

ユーロは1.5ドルか、1.35ドルか

 この米早期利上げがあるかということは、ユーロの行方を考える上でも最も重要な目安だろう。ユーロドルにも、米利上げ前にユーロ安・ドル高が進むといった経験則があるからだ。この経験則を単純化すると、米利上げ前のユーロ安・ドル高は、10%前後というのが一つの目安だ。
 さて、そんな見方をすると、昨年12月の1.5ドルから展開してきたユーロ安・ドル高が、米早期利上げを織り込んだ動きなら、1.35ドルを目指す動きになるはずだ。これまでのところは、1.42ドルでユーロ安・ドル高も折り返す動きになっている。
 これがあらためて1.42ドルを割り込み、1.35ドルを目指すユーロ安・ドル高とならないかぎり、ユーロドルはまだ米早期利上げを想定していない可能性が高くなる。CFTC統計によると、ユーロはすでに「売られ過ぎ」だから、その反動で1.5ドルに戻る可能性も出てくるだろう。それとも、早期利上げが現実味を増して1.35ドルへ向かうのか。1.5ドルか、1.35ドルか、ユーロは大きな岐路に立っているといえそうだ。 (了)

まだ「米利上げ前のドル高」ではない?

2010年01月14日

100114_1 8日発表の米12月雇用統計の結果を受けて、米利上げ見通しは後ずれになったようだ。そうであるなら、それはユーロドル相場にも影響するかもしれない。

◆ECBはFRBに遅行する
 FRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中銀)の金融政策の初動は、後者が前者に遅行するというのがこれまでの基本パターン。このため、利上げ開始前には、米金利が欧州の金利に比べ早く上がり勝ちで、結果としてドル高・ユーロ安が進みやすい傾向がある。
 こういったことを踏まえると、昨年12月からのドル高・ユーロ安は、「ECBより早くFRBが利上げする」ことを織り込んだ動きだった可能性があるだろう。この大前提、FRB利上げシナリオが後ずれしたら、ドル高・ユーロ安の修正といった動きになる可能性も当然考えられる。
 ところで、この金融政策の初動において、ECBはFRBより遅行するというのは、利上げに限ったことではない。99年のECBスタート以降、利上げ、利下げのすべてにおいてECBはFRBより最短で4ヶ月、最長で1年半、「後追い」した形となってきた。
 これを参考にすると、今のところ今回のFRB利上げは早くて今年8月頃との見方だから、実際にそうなったとしてECBの利上げはそれより4―18ヶ月遅れるから、早くて年末、基本的には2011年におこなわれるといった見方になる。

◆米利上げとユーロドルの関係
 ところで、こんなふうに政策の初動のギャップがあったため、上述の通り、とくに利上げ開始前には、ドル高・ユーロ安が進みやすかった。経験的には米利上げ開始までに、10%以上のドル高・ユーロ安が進んできた。
 このパターンからすると、今回も米利上げが現実味を帯びると、1.5→1.35ドルへのドル高・ユーロ安が起こる計算になる。ただ、最初に書いたように、それはいったん仕切り直しなのではないか。
 この米利上げとユーロドルの関係について、もう少し検証してみよう。前回の米利上げ(2006年6月-)、前々回の米利上げ(1999年6月-)とも、利上げ開始前にドル高・ユーロ安となり、利上げが始まるとドル安・ユーロ高になっていた。そしてそんな「米利上げ前のドル高・ユーロ安」は半年程度で10%前後だった。
 さて、これを参考にしたら、昨年12月初めの1.5ドルからのドル高・ユーロ安が、すでに「米利上げ前のドル高・ユーロ安」なら、このまま1.35ドルを目指すはずで、それは今年5-6月の米利上げを想定した動きということになるだろう。
 しかし、今のところドル高・ユーロ安は1.42ドルで折り返す動きになっている。このまま1.4ドル割れに向かわないようなら、これは「米利上げ前のドル高・ユーロ安」ではないということになるから、まだ本格ドル高は「フライング」で、たとえば元の1.5ドル前後までドル安・ユーロ高に戻る可能性すらありうるということになるだろう。(了)

円売り限界か、それとも基調転換か

2010年01月12日

100112_1 12月に入ってから、ほぼ一本調子で米金利が上昇し、ドル高・円安が展開してきた。ただ最近にかけて、さすがにそれをもたらした米国債売り、ドル買い、円売りはいずれも「行き過ぎ」領域に入ってきたようだ。とくにドル買い、円売りは、2007年から続いてきたドル安・円高基調が転換しないかぎり、さらなる拡大は難しい段階に入ってきたといえそうだ。

円売り、ユーロ売りとも「行き過ぎ」圏に

 まずは、ヘッジファンドなどの売買を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計をもとに、円のポジションを確認してみよう。円のポジションは12月29日現在で1.4万枚のネット・ショート(売り持ち)に拡大していた。
 2007年6月から円高基調が展開する中で、最大のネット・ショートは2008年8月中旬に記録した2.3万枚だから、円安へ基調転換したのでなければ、円は「売られ過ぎ」の限界圏に達している可能性が高いといえるだろう。
 次に、ユーロのポジションをみると、これは12月29日現在で3.3万枚のネット・ショート。2004年以降の最大のネット・ショートが2008年9月に記録した4万枚だから、こちらもユーロ「売られ過ぎ」の限界圏に入ってきたことになる。
 つまり、12月初めから12月末までに、ドル円は85円から93円へ、ユーロドルは1.50ドルから1.42ドルへ、ともに円安、ユーロ安がほぼ一本調子で展開したわけだが、その中で円売りも、ユーロ売りも経験的には行き過ぎの限界に達してきたようなのだ。

ドル買いも米国債売りも転換点

 この円安、ユーロ安の裏側で米ドルはほぼ一本調子の上昇となってきた。ではその米ドルのポジションはどうなったのか。
 米ドルのポジション(日本円、ユーロ、スイスフラン、英ポンド、加ドルの主要5通貨のポジションをもとに試算)は、12月29日現在で4.5万枚のネット・ロング(買い持ち)に。これは4月21日(6.1万枚)以来、約8ヶ月ぶりの大幅ロングで、実質ゼロ金利の米ドルとしては「買われ過ぎ」気味になってきたといえそうだ。
 ところで、このような12月に入ってからの米ドル全面高をもたらした一因は、米金利の上昇だった。米長期金利(10年債利回り)は、12月初めの3.1%から12月末には3.8%までほぼ一本調子で上昇した。これをもたらしたのは米国債売り(米国債価格下落=利回り上昇)。ところが、そんな米国債売りも、経験的にはかなり限界圏に達してきたようだ。
 米国債のポジションは、12月29日現在で13.6万枚のネット・ショート(売り持ち)に拡大してきた。これは6月2日(17.9万枚)以来の大幅なネット・ショートだ。米国債のネット・ショートは10万枚を超えると経験的には「売られ過ぎ」。その意味では米国債売りも、限界に達しつつある可能性がありそうだ。
 11月末に84円台まで円高・ドル安が進んだ局面では、円はむしろ「買われ過ぎ」の限界に、そして米ドルも「売られ過ぎ」気味になっていた。その修正から、今回の円安・ドル高は始まった。しかし修正は終わり、今度は一転、円は「売られ過ぎ」、米ドルは「買われ過ぎ」気味になってきた。
 相場は「行き過ぎ」が常だから、中長期のトレンドが円安や、ドル高に転換したのであれば、この「行き過ぎ」がさらに拡大する可能性ももちろんあるだろう。それにしても、そんな中長期の基調転換を試すところまで、円売り、ドル買い、そしてユーロ売りも、米国債売りも、それぞれが重大転換点に差し掛かっているといった認識は重要だろう。 (了)

2010年のドル円を予想する

2010年01月07日

090107_1 あけましておめでとうございます。
 2010年のドル円は、2月80円、9月95円といった展開を予想しています。第1幕は昨年来の円高継続、第2幕は米利上げ期待のドル高・円安、第3幕は米利上げ開始または利上げできないことに伴う「最後のドル安」といったシナリオを考えています。

◆キーワードは米利上げとインフレ
 2010年の為替を予想する上で、まず鍵になりそうなのは米利上げがいつになるかということだ。米利上げ前後のドルには一定のパターンがある。このため、米利上げがいつになるか次第で、ドルの予想も違ってくるわけだ。
 ところで、その米利上げ前後のドルの値動きパターンとは、利上げ前にドル高が進み、実際に利上げが始まるとドル安になるというもの。最近の2回の米利上げ局面は、2004年4月、1999年6月から始まったが、ドルは利上げ開始前の3―6ヶ月で10―15%上昇し、実際に利上げが始まるとしばらく下落が続いた。
 では、肝心の米利上げはいつ始まるのだろうか。今のところ年後半、早くて7―9月期との見方が基本のようだ。そうであれば、「利上げ前のドル高」は、2―3月頃から始まるというが基本シナリオになるだろう。
 逆にいえば、それまでまだ本格的なドル高・円安への動きが始まらないなら、2009年11月末に記録した84円台を更新するドル安・円高リスクが残っている可能性も考えておく必要があるだろう。
 当面のドル安値が84円台で終わったのか、それとも80円前後まで拡大するかは、「利上げ前のドル高」に伴う2010年のドル高値目処を左右することにもなる。上述のように、「利上げ前のドル高」は3―6ヶ月で10―15%というのが一つの目安。また、2007年6月から続いてきた今回の円高基調における調整のドル反発は、2008年3月95円→2008年8月110円、2009年1月87円→2009年4月101円といった具合に15円程度となってきた。
 以上を参考にすれば、「利上げ前のドル高」で決まる2010年のドル高値が100円に届くかどうかは、2010年早々のドル安が84円台を更新するかによって決まることになるだろう。

◆2月80円、9月95円、そして「最後のドル安」
 ところで、順調に年後半に米利上げ開始となっても、過去のパターンからすると実際に米政策金利が引き上げられる中でドルは逆に下がる確率が高いようだ。また、この利上げはいわゆる「出口政策」の一つとして、「100年に一度の危機」を乗り切るための異常な政策発動の副作用であるインフレの回避が目的になるわけだが、このインフレ・リスクがドル安の程度を左右することになりそうだ。
 米利上げが「ビハインド・ザ・カーブ」、つまり後手に回ったり、それどころか2010年中にやはりできない可能性もあるだろう。2009年12月に、バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、「恐ろしい向かい風」と発言した。バーナンキの前任者であるグリーンスパンがFRB議長時代に「50マイルの向かい風」と発言したのは1991年10月だったが、利上げはそれから2年以上も後になった。
 91年10月に、グリーンスパンが「50マイルの向かい風」と表現したのは、クレジット・クランチへの懸念と理解された。この懸念が利上げを遅らせたということだろう。さて、今回のバーナンキもクレジット・クランチ懸念から利上げが遅れる、できなくなる可能性は要注意ではないだろうか。
 2009年8月に、NYタイムズ紙に寄稿した文章の中で、「投資の神様」とされるW.バフェットは、「100年に一度の危機」対策が、やがてインフレとドル暴落をもたらす可能性を警告した。
 確かに財政赤字とドルの相関性からすると、60―70円へドルが暴落してもおかしくない見通しになっている。そんな「投資の神様」によるドル暴落の警告が現実になるか、それが2011年にかけての「最後のドル安」の運命を決める役割となりそうだ。(了)